この物語はフィクションで登場する人物や建物は架空のもので実際には存在しません。
タイの妖怪博士 源治郎
源治郎はソンクランの休暇中、タンブン・パレス・ホテルに宿泊することにした。ネットで調べたところ、幽霊が出るという噂があるとのことだったが、実は源治郎は知る人ぞ知る「タイの妖怪博士」だった。源治郎は噂の幽霊にあってみたいのだった。夜中に目が覚めると、期待どおり奇妙な気配が漂っていた。
源治郎が宿泊しているのは、日本兵が拷問部屋として使ったとされる地下室の近くの客室だった。普通の客室とは異なり、壁や天井には凹凸があり、陰鬱な雰囲気が漂っていた。しかし、源治郎はそれをただの設計上の特徴と考えていた。
真夜中のトッケー
トッケー、トッケー、トッケー、トッケー。奇妙な声がした。夜中、源治郎は突然目が覚めた。時計を見ると、3時を過ぎていた。何か違和感を感じ、目をこらして部屋を見渡すと、暗闇の中に人影があった。ぼんやりとした輪郭の中に、怪しげな姿が浮かび上がる。源治郎は一瞬、目を疑ったが、その姿が本物であることに気づいた。
何かを口にしているかのように、その姿が独り言を呟いているようだった。そして、ゆっくりと源治郎の方へ近づいてきた。源治郎は怖くて声を出せなかったが、その姿は源治郎に気づかないふりをして通り過ぎ、壁に消えた。
その後、源治郎は眠れずに夜を過ごした。朝、源治郎はホテルスタッフにそのことを尋ねたが、彼らは顔をしかめて答えた。「そんなことはないよ。昨晩は静かだったよ。」しかし、源治郎にはあの姿が目に焼き付いていた。
2日目の夜
2日目の夜、源治郎は再び目が覚めた。今度は、不気味な物音が聞こえた。静かにしていると、ゆっくりと音が大きくなっていく。それは、壁から聞こえてくるようなカサカサとした音だった。源治郎はそれが何なのかわからず、怖さのあまり身をすくめていた。
すると、部屋の隅から、霊的な存在が浮かび上がった。その姿は、先ほどとはまったく違うものだった。怒りに満ちた表情で、源治郎を睨んでいる。源治郎は悲鳴を上げようとしても声が出ず、ただじっと恐怖に打ち震えていた。
その姿は、突然源治郎に襲いかかってきた。源治郎は目を閉じて、ただ必死に耐えていた。心の中で南無妙法蓮華経を何度も繰り返した。妖怪にはこのマントラが効果があると信じていた。
しかし、霊的な存在は何度も何度も、源治郎を攻撃してくる。そのたびに、源治郎は必死に南無妙法蓮華経を唱え、反撃を試みるが、何もできなかった。あまりの恐怖に、源治郎は意識を失ってしまった。
目が覚めたとき、源治郎は地面に倒れていた。部屋は静かで、何も起こっていなかったかのようだった。源治郎はそのままベッドに戻り、この恐怖の夜を過ごした。
拷問部屋
翌朝、源治郎はフロントに行って、ホテルスタッフに事情を話した。彼らは、源治郎が宿泊していた客室が、確かに過去に拷問部屋として使われていたことを認めた。そして、その部屋には幽霊が出るという噂があることも、素直に認めた。
源治郎は、目的の幽霊に出会えたのでホテルを出ることにした。その後、源治郎はいろいろなタイのホテルに宿泊したが、あの夜の恐怖は、今でも源治郎の記憶から消えることはない。
そして、ときどき真夜中にトッケー、トッケー、トッケー、トッケーと鳴く奇妙な声を耳にした。
ロイカトーンの夜
年末近く、ロイカトーンの夜、川に浮かべられたたくさんの灯篭の中に源治郎の水死体が黒い愛猫の死骸といっしょに発見された。
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